自然に学ぶ食の知恵
こんにちはロッキー藤井です。
今週は、台湾・台南でのビーガン料理出汁の指導体験を通じて、自然な食の大切さについて深く考えさせられました。
台湾では「素食(スーシー)」と呼ばれるビーガン食文化が根付いており、私たち日本人よりも塩分を半分ほどに抑える、極めて自然な食生活が実践されています。
今回、私は現地の料理人たちに昆布、椎茸、炒り大豆を使ったビーガン出汁の作り方を指導しました。
驚いたのは、彼らの味覚が非常に繊細で、うま味のバランスや自然な香りに敏感だということ。
化学調味料を一切使わずに、素材そのものの力を信じる姿勢には、私自身も多くを学びました。
食とは体をつくるだけでなく、人生の質を左右するもの。だからこそ、今週は「身体に優しい味」「未来に続く料理」について一緒に考えていきましょう。
化学調味料に頼らない「うま味」の技術
かつて「美味しい=濃い味」という時代がありましたが、
現代の食のテーマは、
「いかに自然に、身体にやさしい美味しさを実現するか」
に変わりつつあります。
私が台南で指導したビーガン出汁は、
昆布、椎茸、炒り大豆の3種をベースとしたもの。
時間をかけてじっくりと煮出すことで、深くやさしい味わいを実現できます。
ここでのポイントは、“引き算の味”。
旨味を無理に重ねるのではなく、素材の持つ風味を信じて、静かに引き出していくということ。
例えば、昆布は前日から水に漬けておくと、翌日の朝には、ほぼ出汁が出ています。これを昆布の水出汁と言います。更に少しだけ濃度を上げるために、60度まで温度を上げて、60度Cで昆布を抜けば、雑味のない美味しい昆布出汁の完成です。
次に、椎茸は前の日から水に漬けて翌日も火入れはしません。水だけで十分出汁が出ます。
最後に大豆ですが、必ず、低温で時間をかけて炒ります。20分程度炒ると、香ばしい香りが漂います。しかし、ここで注意をすることは、絶対に焦がさないことです。一部焦げた豆は出汁に入れないで、最初に選別しておきます。
そして、この3種のそれぞれのエキスが溶け込んだ水溶液を一定の比率で併せて、ビーガン白出汁が完成します。これに醤油、みりん、塩等で味付けすれば、完成です。
非常に濃厚で美味しい、味わい深い出汁が完成しました。
味の好みにより、上記の昆布、椎茸、大豆の比率を変えると、さまざまな味を創り出すことが可能です。
台湾の味覚は、日本と比べて非常に薄味です。
塩分も半分ほど。
従って、食材のエキス濃度は、反対に非常に高く、うま味成分の材料の量を多く入れて、濃度を上げる必要があります。
その分だけ、コストは当然、上がります。
これは、健康志向の結果であると同時に、素材への敬意が強い証でもあります。現地の料理人たちは、添加物を避け、乾物や豆類を使って丁寧に味を積み上げています。
その姿勢に触れて、私は日本の飲食業が忘れてしまった「食の哲学」を思い出しました。
化学調味料は、即効性のあるうま味を与えてくれますが、その分だけ味覚を鈍らせ、健康にも影響します。
特にラーメン業界では、うま味調味料の過剰使用によって、健康被害が顕在化している例もあります。
私は、麺学校では一切の化学調味料を使いません。
それは、長く料理に携わってきた中で、多くの実例と後悔の声を聞いてきたからです。
私は化学調味料の代わりに多くの発酵調味料を使います。
酢、納豆の粉末、魚醤等、その土地にある多くの発酵調味料が化学調味料の代わりになり、化学調味料を使うより、もっと深い味になります。
私たちは今、あらためて
「身体と心にとって本当に必要な味」
を問い直す時期にあるのではないでしょうか。
今週の一冊:『シンプルに生きる、食べる』 ドミニック・ローホー著
書籍紹介
今週のおすすめは、ドミニック・ローホー著『シンプルに生きる、食べる』。
ミニマリズムの思想を食生活に応用した名著です。
要約
本書では、フランスと日本の食文化に通じる著者が、無駄を省きながら豊かに食べるためのヒントを提供します。特に、「食べることは人生哲学である」という観点から、素材選び、調理法、食事の環境に至るまで、シンプルで心地よい方法を提案しています。
3つのテイクアウェイ
1.素材に敬意を払うことが、健康と満足感を生む。
2.塩や油に頼らず、よく噛むことで味覚が研ぎ澄まされる。
3.過剰な加工を避け、本来の味を楽しむことで幸福感が高まる。
行動チャレンジ
今週は「1日1食、無調味料チャレンジ」に挑戦してみましょう。
塩も醤油も使わず、素材そのものの味と香りに集中してみると、新たな発見があるはずです。
或いは、もし、使ってでも加減して使いましょう。
今週の人:台南の「村」レストランの一皿
今回ご紹介するのは、台南で出会ったビーガンレストラン「村(Son)」。オーナーの名前は確認できませんでしたが、その料理のクオリティには深い感動を覚えました。
「村」の料理は、驚くほど塩分が控えめです。
にもかかわらず、味が薄いと感じさせないどころか、
「こんなにも深い味が出せるのか」と唸らされるレベルです。
使われているのは、野菜、豆類、乾物などの自然素材。
化学調味料や添加物を一切使用せず、出汁や素材そのものの力で味を構築しています。
特に印象的だったのは、ロースト根菜と豆腐の煮物。
目に見える装飾はありませんが、口に含んだ瞬間に広がる旨味、舌に残る余韻は、まるで詩のようでした。
料理はただの栄養補給ではなく、
人生の質を左右する芸術であると再認識させてくれる体験でした。
台湾の「素食(スーシー)」文化は、菜食主義に宗教や哲学的意義を重ねた深い食文化です。「村」はその流れを現代的に洗練させ、誰もが安心して楽しめるビーガン料理として提供しています。
そう感じさせてくれた、静かで力強い一皿でした。
今週のアクションプラン
今週は「1日1食、無添加チャレンジ」を実践してみましょう。
昆布、椎茸、炒り大豆などの素材から出汁を取り、調味料を控えて料理を作ってみてください。素材の味に集中し、心と体がどう反応するかを観察してみましょう。味覚が研ぎ澄まされることで、食事がもっと豊かな体験になります。
編集後記・今週の気づき
今回の台湾出張では、食の在り方について大きな気づきを得ることができました。ビーガン料理を通じて学んだのは、「料理とは技術であると同時に思想である」ということです。
化学調味料を使えば、味は一瞬で決まります。
でも、それは味覚を麻痺させ、身体に負担をかけるリスクもあります。
長年ラーメン業界を見てきた中で、
「毎日のようにラーメンを食べていた人が若くして亡くなった」
という現実を何度も見てきました。
だからこそ、私は麺学校で化学調味料を一切使いません。
自然のうま味は、手間も時間もかかります。
でもその分だけ、身体は正直に喜びます。料理とは、愛であり、哲学であり、未来への責任なのです。
「村」での食体験を通じて、日本でも「薄味でも豊かな食事」「無添加でも満足感のある料理」は十分可能だと実感しました。
いやむしろ、その方が人生が豊かになる。
塩気でごまかさず、素材と向き合うことで、本当の味と感謝が生まれるのです。
味覚とは、人生の羅針盤。
今週も、自分の身体と感性を信じて、自然な食を楽しんでいきましょう。
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